「メリークリスマス」という前に。多様性の街のクリスマス
クリスマスがやってくる…
12月に入り、街はクリスマスムード一色のロンドンです。
ロンドン目抜き通り「Regent Street」には今年も天使のイルミネーション。華やかです。
この時期、15時半にはもう真っ暗になります。それだけにクリスマスイルミネーションが町中に美しく輝きます。
我が家も小さなツリーを迎え、少しずつクリスマスの準備をはじめています。
先週ツリーが来ました。
— 華子です in London (@hanakolondon_uk) December 7, 2024
毎年、ツリーが育って我が家に来て、最後にカウンシル(自治体)が引き取ってくれるまでの旅路を思い、「これはエコ的にどうなのだろう?」と悩みます。カウンシルがよきものに再利用してくれていると信じて…。
木のアロマが家中に。#London pic.twitter.com/3ivBiFUg0A
毎年生木のツリーを購入している我が家です。「生木のツリー」はイギリスの伝統です。飾る時期が終わった後、道に置いておくとカウンシル(自治体)が回収し、リサイクルしてくれます。でも「本当にエコ活用されているのだろうか?」と、毎年考えます。
日本とはずいぶん違う「イギリスのクリスマス」
日本ではクリスマス当日(25日)より、クリスマスイブの方が賑やかですよね。またクリスマス(イブ)は「恋人と過ごすロマンチックな日」という印象が強いと思います。
イギリスはこの点、日本とかなり異なります。まずクリスマスイブよりもクリスマス当日(25日)の方が断然重要です。24日は午前中まで働く人も多いので、昼過ぎまでは「普通の日」感が漂っています。
そしてクリスマスは「家族と過ごす日」。この日ばかりは恋人同士も各自自分の実家に戻ります。24日の夜から26日の朝まで公共交通機関はすべてストップするので、24日の夕方までには「民族大移動(=帰省ラッシュ)」を完了させます。その後は家にこもり、足掛け3日間、家族と一緒にクリスマスのお祝いを楽しみます。
クリスマスを祝わない人への配慮も定着
12月は国中、街中に「クリスマスムード」は漂いまくっているのですが… クリスマスはそもそもキリスト教のお祝いです。クリスマスを祝わない宗教を信仰している人、クリスマスを祝う習慣がない人もイギリスにはたくさん暮らしています。そうした人たちへの配慮も定着して久しいです。特にこの15~20年でこうした意識は加速的に進み、一般常識になりました。
例えば、クリスマスカードも「配慮」によって大きく変化しました。イギリスは「グリーティングカード」文化が残っている国です。デジタルの時代になっても紙のカード文化はいまも健在であり、クリスマス時期には大量のカードを郵送したり手渡したりします。
Add a festive touch to your collection this season with our Christmas 2024 postcards: https://t.co/j1XJY1eZwm
— Royal Mail Stamps (@RoyalMailStamps) November 6, 2024
These Stamp Cards feature enlargements of each of the Christmas 2024 stamps, showcasing stunning UK cathedrals#ChristmasStamps#Christmas#Christmas2024 pic.twitter.com/W1ERrJEDJy
今年のクリスマス用切手。2つの大聖堂が描かれています。
以前はこの時期に送るカードは「メリークリスマス」と書かれたものがほとんどでした。しかし現在は、クリスマスを祝わない人たちへも出すことができるカード、具体的には「Happy Festive Season(お祭りのシーズンを楽しく過ごしてください)」「Season’s
Greetings(季節のご挨拶)」等、「時節のお便り」としての文言が書かれたものもたくさん販売されています。
クリスマスの前の週から学校は休みになり、またクリスマス当日(25日)と翌日26日(ボクシングディ)は祝日です。クリスチャンでなくても「お休みの時期」であることは変わりないので、「ホリデーを楽しみましょう」と挨拶する分には誰も傷つけることはありません。特に企業や団体等の公の機関から発信されるカードには、「メリークリスマス」以外の文言が使われる方が一般的です。
私自身も毎年数種類のカードを用意します。そして「“クリスマス”の文言入り」を送って良い人、送らない方が良い人に分け、書く内容も変えながら慎重に選定しています。これが現在の「クリスマス時期のカードにまつわるマナー」であり、皆ごく普通のこととして行っています。
クリスマスCMにもみられる配慮
もう1つ、「配慮」についての具体例を挙げたいと思います。
イギリスではクリスマスプレゼントは子どもだけに贈るものではありません。大人にも贈り合うのが慣わしです。そして家族が集まる日なので、大量に食料を買い込みご馳走三昧。12月はイギリスの消費がもっとも伸びる月なので、経済の指標にもなっています。
12月のショッピング街は大混雑。帰省前に家族全員分のプレゼントを買うため、皆必死で買い物しています。
リテイル各社が販促のためにしのぎを削る時期であり、テレビやネットではクリスマスCMが放送&配信されています。毎年トレンドを意識した内容を盛り込んでいるので「各社CM比較」を楽しみにしている人は多く、私もその一人です。
楽しく過ごすクリスマスを演出するCMもあれば、
コートの下はパジャマ…に激しく共感します(笑)。「クリスマスの準備は大変なので、M&S(←高級系スーパー)にお任せ」というコンセプトのCM。
クリスマスを一人で過ごす人がいることに寄り添う内容のCMもあります。
イギリス最大手スーパー「Tesco」のCM。一人で暮らす祖父を思いやる内容。クリスマスは賑やかな時期だからこそ「孤独」を痛切に感じる時期でもあります。
どちらかというと、後者の方が今年のトレンドです
過去には批判されたCMも…
今年の「Tesco」のCMは大変好評ですが、数年前、厳しく批判されたCMがありました。
↓こちらを見てください。
多種多様な人種・民族的背景、様々な年齢層の人たちが集い、楽しくクリスマスを祝う…とい「多様性&インクルーシブの国イギリス」を表現しようとしたCMなのは分かります。一見「何が問題なの?」と思うかもしれません。批判を受けた理由は動画の30秒すぎからでてくる、「クリスマスを祝わないであろう宗教の人たち」と思われる登場人物が、クリスマスを祝っているシーンが次々でてくる点です。
クリスマスを祝わないイスラム教徒やヒンドゥー教徒の人たちも、クリスマスの食事会に呼ばれることはあるでしょう。「いかにもクリスマスを祝わないであろう宗教の人たち」をあえて登場させて「多様性」を表現するのは良いのですが、彼らが能動的にクリスマスを祝っているかのように見える点が問題なのです。誤解を与える描写であったことが批判の理由です。
さまざまな文化的社会的背景の人たちが見るCMです。視聴して違和感や不快感を持ったり、傷ついたりする可能性のある描き方をしてはいけないのは当然のことです。2017年時点ですでにこの考え方はコンセンサスとなっていただけに、「あら、大手スーパーでもこんなことまだやってしまうのね!?」と驚いた記憶があります。
こうした配慮は、世の中の動きに合わせ、今後もさらに進化していくと感じています。
楽しい年末年始をお過ごしください
私自身はクリスチャンなので、クリスマスは「嬉しい日」として祝います。24日は、近所の教会で行われる23時からの深夜礼拝に行き、静かに25日を迎える予定です。
今年は激動の年だったと感じています。日本の総選挙、アメリカ大統領選、そしてイギリス総選挙では政権が交代しました。韓国の非常戒厳、終わらない戦争、中東情勢etc…ニュースを追うのがこんなに大変だった年はなかったかも?と思います。
現在イギリスは恐ろしい速度でインフレが進行しています。この1年で路上生活者が増えたと肌で感じています。私も含め、多くの人たちがたくさんの不安要素を抱えながら暮らしています。でも、それでもクリスマスはやってきてきます。
少しでも光ある方へ。そう祈りながらクリスマスを過ごし、新しい年を迎えたいと思います。
Happy Festive Season! 皆様が、心温まる年末年始を過ごせますように。