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2025.05.17

ホワイトハウスでゼレンスキー大統領の英語表現が物議に—AIを使ってレビューしてみた

2025年2月28日にホワイトハウスで行われたトランプ大統領、バンス副大統領、ゼレンスキー大統領の会談は、異例の公開討論となり、意見の対立が浮き彫りとなりました。発言そのものが正しい表現であったとしても、トランプ大統領を怒らせてしまった可能性があり、その一因としてゼレンスキー大統領の英語表現が指摘されています。もし英語表現がより適切であれば、ここまで炎上しなかったのではないかという見方もあります。この問題についてAIを活用し、発言を分析してみました。

どこがよくなかったのか?

下記は筆者がChat GPTにこの会談のやりとりを読み込ませて分析した回答をそのまま貼り付けたものです。

1. 「あなた方はこの戦争を感じていないが、将来感じることになる」

発言:
“You have a great ocean. You don’t feel this war. You will feel it in the future.”
(「あなた方には大きな海がある。この戦争を感じていないが、将来感じることになるでしょう。」)

問題点:
「あなた方は戦争を感じていない」と断定することで、アメリカが無関心であるかのように聞こえます。また、「将来感じることになる」という表現は、脅しのように受け取られる可能性があります。

改善案:
“Given your geographic position, you may not feel the direct impact of this war now, but in the future, its consequences could reach you as well.” (「地理的な要因から、現時点ではこの戦争の直接的な影響を感じていないかもしれませんが、将来的にはその影響が及ぶ可能性があります。」)

2. 「副大統領、いったいどんな外交について言っているのか?」

発言:
“Mr. Vice President, what kind of diplomacy are you talking about?” (「副大統領、いったいどんな外交について言っているのか?」)

問題点:
カジュアルすぎて挑発的に聞こえる可能性があり、皮肉として受け取られる可能性もあります。

改善案:
“Mr. Vice President, could you clarify what specific diplomatic efforts you are referring to?” (「副大統領、具体的にどのような外交努力についてお話しされているのか、ご説明いただけますか?」)

3. 「申し訳ないが、我々は戦争中だ。そんなことをしている時間はない。」

発言:
“I’m sorry, but we are in war. We don’t have time for that.” (「申し訳ないが、我々は戦争中だ。そんなことをしている時間はない。」)

問題点:
アメリカの提案を一蹴するように聞こえ、「そんなこと」という表現が相手の意見を軽視している印象を与えるかもしれません。

改善案:
“I appreciate your perspective, but given that we are at war, our priorities are focused on immediate security concerns.” (「ご意見には感謝しますが、現在戦争中であるため、私たちの優先事項は即時の安全保障に集中しています。」)

4. 「戦争を終わらせるための唯一の方法は、ロシアに勝利することだ。」

発言:
“The only way to end this war is to defeat Russia.” (「戦争を終わらせるための唯一の方法は、ロシアに勝利することだ。」)

問題点:
この発言は非常に断定的であり、外交的な柔軟性が欠けているように聞こえます。

改善案:
“The resolution to this conflict lies in bringing an end to Russia’s aggression, ensuring peace and stability for the region.” (「この対立の解決策は、ロシアの侵略を終わらせ、地域の平和と安定を確保することにあります。」)

5. 「我々はあなた方が支援してくれることを期待している。」

発言:
“We expect you to support us.” (「我々はあなた方が支援してくれることを期待している。」)

問題点:
支援を当然のように求めている印象を与え、依存的に聞こえるかもしれません。

改善案:
“We are hopeful that you will continue to stand with us in our fight for freedom and sovereignty.” (「私たちの自由と主権を守る戦いにおいて、引き続き支援してくださることを期待しています。」)

6. 「ロシアに対してもっと強硬な姿勢を取るべきだ。」

発言:
“We need to take a tougher stance against Russia.” (「ロシアに対してもっと強硬な姿勢を取るべきだ。」)

問題点:
直訳的で強い要求に聞こえ、相手に圧力をかけるような印象を与える可能性があります。

改善案:
“We urge for stronger international action against Russia to ensure global peace and security.” (「ロシアに対して国際的に強い対応を求め、世界の平和と安全を確保すべきです。」)

国際的なビジネスコミュニケーションと英語表現

今回のケースを通じて、グローバルなビジネスや政治の場における英語の使い方について考えさせられました。英語を母語とする人々に対しては、微妙なニュアンスや語調の違いが「失礼」と受け取られることがあります。

大統領同士のやり取り、特にホワイトハウスでの全世界に公開される会談では、やはり通訳を使うべきだったのではないかと感じました。この事例は英語での外交的な表現を学ぶ良い機会となり、今後の国際的な対話における表現の重要性を再認識しました。

HUBPLUSからあなたの?へ

この出来事について様々な記事が出ましたが、Forbesのものがとても参考になりました。

参考記事: Forbes 英語ノンネイティブの不利を伝えたゼレンスキー英語と「日本人のための7カ条」

(引用)

AIは文法的に正しい訳を作るが、ビジネス交渉では『何をどう伝えるべきか』という文脈が重要になる。AIはこの文脈を理解せず、直訳を行うため、交渉の意図が正しく伝わらないリスクがある。

具体的には、AIは以下のような個別の交渉に不可欠な情報を持っていない。

• その交渉の目的
• 何を実現しようとしているのか
• これまでの交渉の経緯
• 交渉成立のための判断基準

さらに、AIは言葉の意味を本質的に理解しているわけではなく、確率的に単語やフレーズを選択しているに過ぎない。そのため、解釈が難しいリクエストに対しては、独自の判断で辻褄を合わせ、頻出表現を組み合わせて「適当に」訳出してしまうことがある。

その結果、AI翻訳がブラックボックス化し、当事者の意図とは全く異なる解釈で交渉が進んでしまうリスクが生じる。両方の言語を理解し、AIの翻訳の妥当性を判断できる人がいない場合、交渉におけるリスクは非常に高い。


ガチの対決場面でAIを介在させてはかえってリスクが高いということですね。

この記事の執筆者
ミッシェル

現役シニアiU生。雙葉学園から慶應義塾大学を卒業後、日系航空会社に入社。マーケティング&セールスからDX部門まで、エアラインビジネスの最前線に従事、働く女性の時代を駆け抜ける。 会社人生の終盤に、地元に新設されたiUに入学し、二度目の大学生活をスタート。2年次にZ世代学生2名と(株)MediAlphaを設立。幼少よりQUEENをこよなく愛し英国かぶれ。趣味はスポーツ観戦、ワイン(飲むリエ)、茶道(裏千家)。

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