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2024.10.23 2024.10.29

20歳の教科書 空きスペース戦略とは? 松村太郎に人生を聞く

松村太郎来歴

1980年生まれ。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科を卒業と同時に、2005年よりフリーランスジャーナリストとして、ライフスタイルとテクノロジーの関係を取材・執筆。
2011年から、アメリカ・シリコンバレーに引っ越し、現地からGAFAやスタートアップの取材を行い、現在もApple、FacebookなどのCEOや役員のインタビューを実施。
2014年、長野県上田市にコードアカデミー高等学校を設立、初代副校長に就任。
2020年に日本に帰国、iU 専任教員として、デザイン思考、スタートアップ、ケーススタディ、クリエイティブの授業を担当。

「20代の頃、何をしていたか」

インタビュー:ITジャーナリスト/大学教員 松村太郎氏

―― まず、松村さんが20代の頃、どんなことをしていたのか教えていただけますか?

松村:私はもともと大学時代個人ブログの研究を行っており、その中で携帯電話とパソコンのことについても専門的に取り組んでいました。その後は主にブログを中心に、ジャーナリズムとアカデミックの両方をバランス良く取り組んでいましたね。大学で教員を行いつつ、ジャーナリストとして記事を執筆していました。取材で得た知見を記事として発信するだけでなく、大学教員として授業で活かすこともありました。

―― 2009年ごろにはソーシャルメディアが台頭してきましたが、その頃の松村さんの仕事はどう変化しましたか?

松村:2009年頃から、スマートフォンやソーシャルメディアが注目され始めました。当時はUSTREAMやYouTubeなどが新しいメディアとして登場し、私もそれらを使った実験的な取材を行っていました。特にスマートフォンはその後のテクノロジーの進化に大きな影響を与えましたね。それに合わせて私も仕事の方向性を少しずつシフトさせていきました。

また、自身のキャリアを築く上で大切だと感じたのは、「アウトプット先を増やしておく」ことです。先ほども伝えましたが、例えば、記事という形だけでなく、大学での講義やプレゼンテーションの場でのアウトプットを増やしておくことで、自分の知見やスキルを様々な形で提供できる状態を作っておくことが重要です。純粋に稼ぎ口として二つある状態はキャリアを形成する上でリスクを回避することができますからね。他にも、記事を書くだけではなく、自分の持っている情報や考えを複数のプラットフォームで発信することで、常に新しい機会に恵まれる可能性が広がります。そういった意味で、アウトプット先を増やすことは、長期的なキャリアの生存戦略にもつながります。

―― ジャーナリストの活動としてシリコンバレーに移住をしたとのことですが、移住の決断はどのようにして下されたのですか?

松村:シリコンバレーに移住した理由は、ジョブズが2010年にAppleを引退したことで、生涯でジョブズの取材をすることができなくなったことが大きいです。今実在する、Appleを取材するジャーナリストの中で、ジョブズを直接インタビューができていないのは私くらいなもので、かなり後悔をしました。自身の中でも、もう少し早く行動をしていればという思いも強くこれ以上のチャンスを逃すまいと思い、当時のIT最先端のシリコンバレーに移住を考え始めました。

また、2011年には東日本大震災が起こり、その影響で日本の状況も変わり始めました。そのころのドル円レートが75円/ドルという、円高になり、すぐに貯金をドルに変え、シリコンバレーに行く準備を始めました。

また、当時、私のキャリアの中でも「このまま日本に留まっていても限界がある」と感じ、ポジションを変えなければと思っていたことと、2009年に結婚していたこともあり、人生の転換点としてシリコンバレーでの新しい生活を始めるチャンスだと考えました。

―― シリコンバレーでの生活はいかがでしたか?

松村:シリコンバレーでの最初の半年は語学学校に通いました。英語ができなかったので、そこからのスタートでした。アメリカのビザを取得する際には、大学の修学期間1年を3年間の実務経験として換算ができるため、自身のジャーナリスト歴6年に修学期間の2年×3年=6年を足した計12年のキャリアとして申請し、ジャーナリストビザを取得することができました。その後は、現地で取材活動を行いながら、日本向けの記事を書くという生活を送りました。

「今の20歳ならこれをやっていた」

―― もし今の20歳だったら、どんなことをしていたと思いますか?

松村:今の時代なら、間違いなくSwiftを学んでいるでしょうね。SwiftはAppleの開発言語で、iPhoneアプリを作るために必要なスキルです。重要になってきていますし、そういった技術を持っていればグローバルに評価される時代です。しかも、これらのスキルは独学でも十分身につけられますから、今の若者にとって大きなチャンスだと思います。

―― アプリ開発に取り組むべきだと考える理由は何ですか?

松村:私の研究室の学生たちも、Swiftを使ってアプリを作ったりしています。例えば、Walletを利用したスタンプラリーのアプリを自作して、それがTestFlightで試せる段階にまで進んでいます。アプリが動くというだけで、それがビジネスに繋がる可能性もありますし、何よりもプロトタイピングのスピードが非常に速いんです。動くものがすぐに作れるということは、それだけアイデアの価値を見せるまでが早いということです。

また、これからの時代はAIを活用したアプリケーションが増えてくるでしょう。Swiftを学ぶことで、その最先端の技術にも対応できるようになると思います。バックエンドのシステムやビジネスモデルに関わることも、Swiftが使えることで多様なアプローチが可能になります。

―― ITスキルを持つことは今後のキャリア形成に必須だと考えますか?

松村:間違いなくそうですね。特にITジャーナリストとして活動してきた経験からも、テクノロジーのスキルがないと、今後の市場で生き残るのは難しいでしょう。コードを書けること、アプリを作れることが、ビジネスにおいても必須のスキルになってきています。

ここで重要なのが、「ホワイト(空き)スペースを探す生存戦略」です。私自身、ITジャーナリストとして活動しながら、常に「まだ誰も手をつけていない分野」や「今後需要が高まる分野」を見つけることに注力してきました。例えば、スマートフォンの黎明期には、それに関連する取材や記事の需要が高まりました。そういったホワイトスペースに目をつけ、いち早くその分野でのアウトプットを増やすことで、自分のポジションを築くことができました。

20歳へのアドバイス

―― 今生きる20歳にアドバイスをいただけますか?

松村:自分をマーケティングする力をつけることが大切だと思います。自分がどこで価値を発揮できるのか、どこで求められているのかを見極め、そのスペースに飛び込む勇気が必要です。ホワイトスペースを見つけ、その分野でいち早くアプローチすることが、キャリア形成において非常に重要です。また、同時にアウトプット先を増やしておくことも大切です。特定の一つの場所だけでなく、複数のプラットフォームで情報を発信することで、自分の可能性を広げていけます。

また、趣味のように楽しめる仕事を見つけることも大事です。趣味的な活動であっても、それが需要のあるものであれば、価値を提供できる場所は必ずあります。自分のスキルや能力をしっかりと磨きつつ、どの分野で需要があるのかを見つけていってほしいと思います。

最後に筆者より

今回は、ITジャーナリスト、そして大学教員という二足の草鞋を履き続けるキャリアを持っている松村太郎さんにインタビューを行いました。今回の話では、仕事の稼ぎ口は常に複数持っておくこと、トレンドに反応できるように基本的なスキルはマルチユースに持っておくこと、そして、常にホワイトスペースを戦略的に見つけ続けることが重要であるということでした。新しいものを常に取り入れる精神や、それに順応するだけのスキルを磨き続けるのが何か自身にフィットする空きスペースを見つけることのできるものになるのではないでしょうか。

この記事の執筆者
瓜生雄羽

2002年生まれ 桐朋高校よりN高等学校に編入。 高校を卒業後、配信などの業務アシスタントを経て、フリーランスのカメラマンとして活動。 2022年のiUに入学し、翌年2023年に株式会社MediAlphaをCMOとして立ち上げ。現在は同社にてクリエイティブディレクターとしても活動している。

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